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卸売市場の生鮮食料品供給

吉田 十一 著

ハードカバー A5判

 

はしがき

 わが国卸売市場は,大正7年の米騒動を契機に、優れた食料品を公正な価格で消費者に供給することを目的に開設され、長い間、その使命を果たしてきました.しかし、現在、全国,どの卸売市場も、規模の大小を問わず、取扱量の減少に遭遇しております。このため、卸売市場法改正によって、取引規制を緩和したり、入場業者の合併、施設改善等の対策が講じられています。すべて必要な対策ですが,問題の本質解明には,こうしたミクロ的側面だけでなく、市場環境をも包むマクロ的側面をも併せて考えなければならないのではないでしょうか。このような観点から、本書では、まず、大規模中央卸売市場の取扱動向から、卸売市場における生鮮食料品取扱量の減少が、特定の個別市場のみにおいて起こっているのでないこと、主要な原因は、輸入食料品の増加によって、国内生産物取引を主体としてきた卸売市場の取扱量が減少してきているということを明らかにします。

 次に、こうして狭隘化した生鮮食料品流通において展開されている、卸売市場間の熾烈な競争状態を、大津市公設地方卸売市場と京都市中央卸売市場との滋賀県内における生鮮食料品供給競争を事例として、明らかにします。後発地方卸売市場がわが国最古の大規模中央卸売市場に挑戦する様は、近江商法の京都商法への挑戦にも擬せられますが、成果拡大は容易でありません。しかし、大津市公設地方卸売市場も、開設15年を経て、野菜取扱高が上昇軌道に乗りつつあります。県内量販店と県内外他市場とからの需要拡大が牽引力になっています。卸売市場流通復権の端緒として期待したいところであります。そこで、大津市公設地方卸売市場開設当初に寄せられた市場利用者の市場への期待機能や、全国で発生している最近の食料品流通における消費者問題の分析によって、卸売市場が、改めて、当初目的である消費者サイドへ回帰する必要性を再確認します。

 本書は,以下8項目のトピックスを取り上げます。すなわち、(1)卸売市場の整備と生鮮食料品流通、(2)大津市場における生鮮食料品供給、(3)卸売市場における生鮮食料品取扱量の減少、(4)生鮮食料品供給における市場間競争、(5)卸売市場の供給圏と調査、(6)生鮮食料品卸売市場流通の諸問題、(7)大津市場における野菜の集荷と分荷、G卸売市場と消費者流通問題。

 分析は、筆者が担当した「大津市公設地方卸売市場の供給圏調査結果」をベースにしています。この種の流通調査は多くの卸売市場で実施していますが,分析は、市場施設整備、市場流通管理の側面に焦点が当てられています。しかし、流通調査結果は流通機能の側面をみることもできます。そこで、本書では、後者の観点からこれまでの調査結果をとりまとめてみました。また,卸売市場における流通調査結果を市場部外者が入手することは容易でありません。そこで、この種の調査の具体的な方法と大津市公設地方卸売市場における調査結果の累年統計とを付録としました。

 本書で取り上げた大津市公設地方卸売市場は、多くの後発卸売市場と同じように、開場当時の経済情勢を反映して、やや楽観的な業績見通しを持って出発し、結果的に、過大な責務を負わされたきらいがありました.しかし,いま,第八次卸売市場整備計画において、現状からビジョンを再構築しようとしています。場内では、青年部が組織され、再建にかかっています。また大津市公設地方卸売市場の野菜供給を補強している、市街化区域内の「大津野菜」出荷産地において、若い新規就農者が誕生しています。

 現在卸売市場が当面している問題解決には、行政機関、すべての卸売市場関係者、生産者、消費者の協力体制が必要になっています。関係者の連帯に、本書が多少とも役立てば、望外の幸いであります。

 最後に、本書を出版してくださった(株)デックス 代表取締役 信田薫氏と出版の労をとってくださった(株)デックス 相談役 河上定雄氏とに心からの謝意を表します。また調査にご協力くださった、大津市公設地方卸売市場管理課及び市場関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

 

 

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